地方にいる食品衛生監視員のブログ

あなたのお役に立ちますように(たまにネガティブなことも書きます…笑)

ノロウイルスの話 その1

更新がかなり空いてしまいました。

この時期はノロウイルスに関する仕事が増えてきます。

冬が来る前に書くべきですが、今日はノロウイルス(以下、ノロと略します)について書きたいと思います。

 

ノロの予備知識として、

・11月~3月の冬場に流行る

・一般的な食中毒菌よりも抵抗力が強く、小さい

・潜伏期間は24~48時間で、下痢・嘔吐(どちらも発症割合が約80%)、発熱が主症状

二枚貝の一次汚染、従事者等からの二次汚染がある

・不顕性感染者(ノロに感染しているが症状が何もない人)からも高濃度でノロが排出

・人を発症させるのに十分な量(10~100個)のノロ保有しているのに、簡易検査で  は陰性と出ることがある

 

こんなあたりでしょうか。

下痢・嘔吐の発症割合が約80%というのは、ノロに100人発症したら約80人が下痢・嘔吐が出るということです。冬に流行るというのがやっかいで、風邪、インフルエンザに症状が似ているので、「今日はなんだか熱っぽいな」と感じても風邪を引いたのかなと誤解してしまう可能性があります。また、私は当たった経験がないのですが、文献を読んだり、患者の方に聞き取った感触だと、下痢・嘔吐は突発的で、堪え切れないもの、トイレとベットの往復しかできない状態になることもあり、とにかく辛いそうです。そのため、普段と違う下痢が出たり、堪え切れない嘔吐が出たら要注意です。欠勤するか、食品を直接触らない作業に移るべきです。

 

私が過去に携わった食中毒事件で言うと、ある定食屋で一人で仕込み~調理を行う店主がいたのですが、本当は仕込み前に下痢が酷いということを実感していたのですが、そのまま調理を行ったところ、ノロで営業禁止になりました。サラダなど素手で触るメニューもありましたので、それが原因ではないかと推定されました。本人もその心当たりがあったため、こちらの話を真摯に受け入れていただきました。

 

注意点としては

・手洗いの励行

・体調不良を感じたら調理に携わらない

・検便検査をする時は簡易検査ではなく、PCR法等の感度の高い方法で行う

二枚貝はしっかり加熱する

 

ある給食業者で、毎月冬場だけにノロの検査をしているところがありました。聞いてみると簡易検査ということで、今までに陽性の人はいないとのことでした。個人的な意見ですが、ノロの検便は意味がないと思っています。その理由として、

①簡易検査でノロをやっても陽性と出ることはまずなく、陽性と出るくらいなら既に何かしらの症状が出ており、欠勤させるべき状態であること

②そもそも検便はその瞬間を切り取っているだけなので、それで陰性という結果が返ってきたとき、安心して普段の意識が下がる可能性があること

 

もちろん事業者の方には無意味とは言いませんでした。検査するなら感度が高い検査にしてくださいねと言った程度です。監視員によってどこまで言うか変わりそうですね。少なくとも私の周りではノロの検査法まで突っ込んでいる人がおらず、自分のやり方に少し不安を覚えましたが、自分が必要だと思ったことを「まあいいや」と思わず、根拠を持っていうことは非常に大事だと思っています。

 

ノロの話は掘り下げればたくさんありますので、別の機会でまた書きたいと思います。